veirosが何か言いたげにこちらを見ている

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96:くらるべるーん : 2011/07/26 (Tue) 23:11:05
【エラキス干渉戦争の悲劇 クラルヴェルンside-5外伝 恐怖の夢のお店】

 メッサーナの伝統あるショッピングモール「月の回廊」の一角に、風変わりな店がひっそりと開店していることを知るものは少ない。
 店の名前は「お面屋」。ショーウィンドウには様々なお面が、それも玩具ではない、変装にも使えるような本格的なものが展示されている。一般的な市民にとって、需要の全くないこのお面屋だが、この店を必要としている人間が一定数この時代にはいた。
「いらっしゃいませ」
 客の全くいない閑散とした店。壁や棚にひたすら面が飾られている店内は不気味ですらある。店の入り口に設置されていた鈴が可愛らしく鳴り、読書していた店主が客を迎える。
「……」
 帽子を目深に被ったその客は押し黙って店内を見渡す。そして人間にしては儚く美しすぎる店主を見やった。
「…夢魔様」
「はい、テリブルドリームと申します。お客様」
「お任せします。顔を下さい」
「はい。それでは試着室へどうぞ。鏡は…処置のあとでよろしいでしょうか」
「はい」
 客が帽子を外す。北部戦線帰りの、火炎放射器榴弾で火傷し欠損したおぞましい顔が明らかになる。テリブルドリームは気がついた。彼の左腕は、肘から先が無い。
「お気の毒に。苦労なされたでしょう」
「はい…」
 涙を堪える客を、夢魔はそっと抱きしめる。
 ここは顔を失った人々が訪れる店。
 夢魔は過酷な真実を覆い隠し、幸福な虚偽で世界を満たす。