veirosが何か言いたげにこちらを見ている

FIREしたい!FIREする!!FIREを目指す!!!

エステル財政委員会議事録

「同志諸君」
 会議室の円卓に集まった我々を見て、カザン書記長は神妙な面持ちで語り始めた。
「知っての通り、私たちは冬を間近にして石炭がない。集団農場の六割には、春に使う分の肥料もないわ。凍死者と餓死者が国内に溢れれば、昨年と同じように無政府状態に逆戻りだわ」
 解決案があれば述べて欲しいという書記長の問いに、答えるものは誰一人存在しなかった。
「買うしかないわね」
 書記長の言に円卓がざわめいた。
「買うと言いましても……、現金がございません」
「借金するの。国債発行よ」
「それは危険です。現在でも利子の支払いが財政を圧迫しているというのに」
「まともなレートで引き受ける国や銀行があるとも思えません」
「まともなレートでなくてもいいわ。生存に最低限の分だけ必要資金見積もって、発行よ」
 書記長は既に決断している様子だった。
 各委員会から輸入燃料や食料、資材が見積もられ、概算される。
 これだけあれば、と、円卓に希望の火が灯った。
「…しかし、返済の当ては?」
 誰かのつぶやきに、書記長はこともなげに答えた。
「ここに一万コルナ紙幣があるわ」
「はい」
「仮に国債を一千万コルナ発行したのなら、」
「はい」
「千枚刷るだけで返済可能よ」
 
国債引き受けが決まったら、十万コルナ紙幣を作りましょう。肖像画は私でいいわ。きっと暖炉行きになるでしょうから」