veirosが何か言いたげにこちらを見ている

FIREしたい!FIREする!!FIREを目指す!!!

彼女に静かな微睡を byせらふぃー

帝国歴790年2月21日。当時、ヨーグ海のとある火山の大噴火から三年が経ったが、その影響は未だ続いて世界的に冷害が発生していた。
ここはアンゼロット記念大学エタブリッシェキャンパス理学研究院バークタイン研究室。
机上に並ぶ研究メモ、膨大な数の報告書、本棚には無数の、ありとあらゆる学術分野に関する専門書。
それらを支配すべき、この研究室の主であるアンゼロットは、昼食のシチューを食堂で食して戻ってきたところだ。
ティーカップカーニャムのTGFOPを淹れて、そして椅子に座り、研究の続きに入ろうとする。
すると、扉が開きある人物が部屋に入ってくる。アンゼロットがその人物に一瞥を与える前に、その人物はこう言った。
「マスター、非常事態です!」
「もうマスターではないといっているじゃないですか。それで、どうしたんですか?」
「えー、クラルヴェルンでの農民反乱は、帝都郊外での戦いで帝国軍を圧倒。帝都に向かっているとのことです、アンゼロット様。」
最後の呼びかけはどこか笑いを含んでいたが、アンゼロットは流すことにした。先に聞かなければならないことがある。
「…帝都は、孤立した状態で何日間持ちそう?」
「1ヶ月くらいは、なんとか持つでしょう。…ただし、それ以降は食糧備蓄が底を尽き、士気の致命的な沮喪が予想されます」
「まずいですね。…彼女らしくもないことですけれども。…帝都に向かいますよ。準備を」
「本気ですか?帝都近郊には民衆軍が…」
「確か、疫病にやられにくいジャガイモがあったはずですね?動かせるだけの輸送力を確保して、運べるだけの用意を」
農民反乱の只中に大量の食糧を持ち込もうとすれば、何が起こるかは明白。
けれども、それを圧してでもアンゼロットは帝国に支援しようというのである。
厳密に言えば、帝国にではなく、帝都の人々、いや夢遊宮の彼女たち、いやその中心で玉座に座する彼女に。
「…わかりました」
そこまでわかっているがゆえに、ミリティアは何も言わない。その必要がないとも言える。
「あとは、牛乳と牛肉を。冷蔵の星術は私が掛けましょう。あなたとして個人的に送るものは?」
「ありません。私が個人的に送るものは、私が仕えるマスターの贈り物と同じですから」
「…私はもうマスターではないといっているのですが、まあいいでしょう。参りましょう」